タマネギの効能は涙?
金曜日, 12月 17th, 2010タマネギを刻んでいると…そう、あの痛み!ツンとくるにおいとともに、目からは涙が次々と。あー、痛い!!「あれさえなければ、タマネギ料理ももっとラクなのに」と思うこともよくある。しかし、このにおいの成分が、なかなか優れものなのだ。
タマネギは、世界中のあちこちで栽培されているユリ科ネギ属の植物で(意外にもユリの仲間だったのか!)、生でも、加熱してもおいしく食べられ、幅広く利用されている。タマネギやにんにく、ニラなどネギ属の植物に特有のあのにおいの成分は、硫化アリルと呼ばれる、硫黄を含む化合物である。硫化アリルは、タマネギのにおいや辛味のもとなのだが、それだけではなく、胃の消化液の分泌を促進し、食欲増進効果をもたらしたり、殺菌作用をもっている。そのため、ネギ属の植物には、胃や腸の調子を整える、発汗を促す、からだを健康で丈夫にするなどの目的で、薬用に利用されているものも多い。タマネギは、風邪の初期症状にも効果があるとされ、台所の薬草のひとつともいえる。風邪をひいたときには、タマネギをたっぷり使ったスープや味噌汁を飲んで布団に入ると、汗がたくさん出やすくなり熱を下げる、また、タマネギの絞り汁を薄めてうがいをすると、咳や痰を鎮めるといわれている。
さらに、最近では、このタマネギのにおいのもとである、硫化アリルには、動脈硬化の原因となるコレステロールを抑えたり、ベニクモ血栓をできにくくする作用が期待されている。よく耳にするようになった、タマネギが「血液をさらさらにする」効果は、このことである。
また、買ってきたばかりの調理前のタマネギは、顔を近づけて、においを嗅いでみても、ツンとしたり、涙がでることはない。しかし、タマネギを切り始めると(ときには、皮をむいただけでも)、涙が出てくるのは、なぜだろう?
タマネギにはもともと硫化アリルの一種であるアリインと呼ばれる物質が含まれている。アリイン自身は、無臭なのだが、アリイナーゼという酵素によってアリシンという物質に変化する。これがにおいや辛味をもつのだ。アリインとアリイナーゼはタマネギのなかの別々の細胞に含まれており、皮をむいたり、切ったり、あるいは虫にかじられたりして、細胞が壊れると、このふたつが出会って、においが発生する。さらに、切ったあと、アリシンは空気中の酸素と反応し、チオプロピオンアルデヒドという涙腺刺激性の強い硫化アリルを生成する。タマネギを刻んでいると、あとからあとから流れ出る、あの涙はこのためだ。
また、アリシンには、ビタミンB1の吸収を助けてくれる働きもある。ビタミンB1は炭水化物をエネルギーに変えるために必要な栄養素で、不足すると疲労や不眠、食欲不振やイライラなどの症状がおこる。ビタミンB1を多く含む豚肉やうなぎ、かつおや大豆などと一緒に摂ると、夏の疲労回復にも効果的である。
調理中は、しばしば目の痛みに困らせられるタマネギの硫化アリルだが、毎日続くこの暑さに疲れた今日この頃、様々な健康効果を期待しつつ、涙をこらえてタマネギを刻むとするか。
タマネギを切る前に冷蔵庫で15分ほど冷やしておいたり(冷蔵庫はタマネギの保存には向かないが)、包丁やタマネギの切り口を水でぬらしたりして、揮発成分である硫化アリルの発散を抑えることで、作業は少しやりやすくなる。
しかし、切ったあと水にさらすと硫化アリルは流れてしまうので、あまりさらし過ぎず、辛味は酢をつかってやわらげるとよい。
また、硫化アリルは、タマネギの酵素によって熱に強い成分に変わるため、加熱するときは、切ったあと30分~1時間ほどおいてから火にかけるとよいようだ。
ただし、食べすぎは胃腸の不調を起こすこともあるので、注意したい。タマネギは、v26 薬最も身近な食材のひとつ。健康づくりにおおいに役立てたいものだ。